富士山の山麓を自転車で一周する「富士いち」は、サイクリストなら一度は憧れるルートのひとつ。とくに御殿場を起点とする走り方は、アクセスが良くサイクリストに人気があります。そんななか、2019年6月30日(日)にサイクリングイベント「ツール・ド・ニッポン2019 富士山一周サイクリング」が、御殿場発着で初開催されました。このイベントのレポートとインタビューを通して、御殿場からめぐる富士いちの魅力をお届けしましょう。
「ツール・ド・ニッポン2019」富士いち大会レポート
6月の最終日、御殿場市の公園施設「樹空の森」を会場に行われた、記念すべき第一回目のサイクリングイベント「ツール・ド・ニッポン2019 富士山一周サイクリング」。イベントの前日も当日も終日雨に見舞われたなか、全国から815名のサイクリストが御殿場へ集結しました。
コースは御殿場から半時計回りに、須走、富士吉田、河口湖、朝霧高原と富士山麓を一周するもので、総走行距離117.8km、獲得標高1,744mというハードな内容。初心者にとってはチャレンジングな、中上級者にとっても走りごたえのあるコースになります。コース上には5つのエイドが設置され、麺を中心としたご当地グルメが参加者に振舞われました。
今回のイベントにゲストとして登場したのは、アテネオリンピック代表の田代恭祟さん、YoutuberのMIHOさん、ヨガインストラクターのおおやようこさん、イラストレーターの岩本陽子さんなど、自転車好きにとってはおなじみの面々。前日イベントから、ステージ上で講座やクロストークなどを行い、この富士いちイベントを盛り上げていました。
イベント開催中には、会場の樹空の森では飲食ブースや物販ブース、マッサージブースなどが並び、ゴールを待つ家族やゴールした後の人々の休憩場所に。参加者たちが続々とゴールし始めた昼過ぎには雨足も弱まり、会場内の人々もほっとした表情で食事や買い物を楽しんでいました。
「雨で富士山は全然見えなったけど、美味しい麺がたくさん食べれて楽しかった」
「初大会でした。霧ライドもなかなか良かった」
「楽しかったです。でも、来年こそは富士山を眺めながら走りたい!」
悪天候のなかでの開催となったものの、初回を事故なく無事に終えられた「ツール・ド・ニッポン2019 富士山一周サイクリング」。樹空の森へ戻ってきた参加者たちは、ずぶ濡れになりながらも、達成感に満ちた笑顔で溢れていました。
印象的だったのは、こうした大会に出るのは初めてという参加者が多かったこと。それだけ、「富士山一周」には多くの人を呼び込む魅力があるということなのでしょう。
富士いちが御殿場発着で開催された理由とは
御殿場が会場に選ばれた背景のひとつには、2020年に開催される「東京オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、オリパラ)」の影響が大きくあります。オリパラの種目であるロードレースのコースの一部に御殿場が含まれることが決まり、街全体として自転車競技に対する機運が高まっていたところに、今回の「ツール・ド・ニッポン」の話が持ち上がったわけなのです。
「自転車をきっかけに御殿場を知ってもらいたい、という思いで活動を続けてきましたから、今回の富士いちの開催決定は私たちにとって非常に嬉しいニュースでした。2020年のオリパラに向けて、ほかにも御殿場でいくつか自転車イベントが計画されていますので、今回の富士いちを皮切りにいっそう盛り上げていきたいです」
そう熱く語ってくれたのは、御殿場を中心とする富士山周辺のサイクリスト集団「富士山ごてんばサイクリングプロジェクト(FGCP)」の代表を務める、永井誠一さん。FGCP主催のイベントをとおして、これまでも御殿場発着の富士いちの魅力を多くのサイクリストたちへ発信してきました。
かねてより悲願だった富士いちの開催に、喜びを噛みしめる永井誠一さん。イベント当日は、約60名ものサポートライダーを束ねるという重要な役割を担っていました。
永井さんに、御殿場発着で富士いちを走ることの魅力についても伺いました。
「御殿場駅まで、新宿駅から小田急線のロマンスカー1本で来られるという、アクセスの良さですね。今回の会場である樹空の森は御殿場駅から7.4kmと程よい近さにあります。この施設内には御胎内温泉もありますから、一周した後に温泉で汗を流して御殿場駅へ、というプランも可能。今回の富士いちのように御殿場から半時計回りに一周すれば、コース上でもっとも傾斜がきつい籠坂峠を早いうちにクリアできるので、そういう意味でも、自転車乗りにとってメリットが大きいんです」
地元サイクリストから熱望されていた「ツール・ド・ニッポン2019富士山一周サイクリング」。この「ツール・ド・ニッポン」シリーズを主催する、ルーツ・スポーツ・ジャパン代表の中島祥元さんは、御殿場開催に至った経緯をこのように語ってくれました。
「『ツール・ド・ニッポン』の多くは、各地域からの要望に応える形で開催してきましたが、今回は自分たちの意思として「富士山一周サイクリングを実現したい」との思いで実現に向けて動き始めました。当初、サイクリングを通した静岡県内の地域振興について業務提携をさせてもらっているスルガ銀行さんに相談し、発着地点の候補として御殿場市があがってきました。スルガ銀行さんと一緒に、市役所の皆さんにご提案したところ、オリパラを控えていることもあって市の方々から開催への強い要望をいただけたことが、御殿場発着での開催を決めた理由です。関東からのアクセスの良さも、もちろん決め手のひとつですね」
「ツール・ド・ニッポン」を主催する、一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン代表の中島祥元さん。
実際に募集が開始されると、1150人のエントリーがあったという富士いち。当日は終日、あいにくの雨天に見舞われましたが、それでも815名が参加して、全員事故もなく無事に終了。次回の開催に向けて、大きな一歩となりました。
「今年は運営で手いっぱいになってしまいましたが、来年以降は、イベント参加者に御殿場や周辺の地域を楽しんでもらうための仕組みを作りたいですね。インバウンドに向けても、もっとできることがあると感じています。地域の方々との連携をより深めて、イベントの継続・拡大を目指していきたいです」
「ツール・ド・ニッポン」の成功を起爆剤に、御殿場の自転車ムードがさらに盛り上がっていくことは間違いありません。
■「富士山一周サイクリング」開催概要
開催日:2019年6月30日(日)
コース:約120km
主催:一般社団法人ルーツ・スポーツ・ジャパン
共催:御殿場市
特別協力:スルガ銀行
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*スポーツ振興くじ(TOTO)助成事業として開催。
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2019年に御殿場で開催される自転車イベント情報
最後に、2019年7月以降に御殿場で開催予定のイベント情報をお届けします。今回のイベントに残念ながら参加できなかった人も、まだまだ御殿場で自転車を楽しめる機会はあります。ぜひチェックしてみてください。
■スルガ銀行×御殿場市 マイペースで上ろう富士山新五合目ヒルクライム17km
日程:8/8(木)、8/22(木)、8/29(木)
https://mtfujitrailstation.com/surugabank-hillclimb-event-2019/
■富士山ヒルクライム(ツール・ド・ニッポン)
日程:10/20(日)
http://www.tour-de-nippon.jp/series/fujisanhc/
写真◎蟹由香